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  【蕪村菴俳諧帖12】 其角と半面美人
 

 

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◆俳諧点取りブーム
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芭蕉十代弟子のひとり榎本其角(1661-1707)は
『俳家奇人談』に「その性放逸にして人事にかゝはらず」とか、
「常に酒を飲んでその醒めたるを見ることなし」とか、
少々やっかいな変わり者として紹介されています。

ここでいう「人事」は人としてするべき事柄のこと。

あるとき、其角に採点して欲しいと一巻の作品が届きました。
其角はちらと見て使いの人に返し、
あまりに初心者なのでわたしが採点するには及ばない、
先輩にでも相談しなさいと言います。

使いがそれなら点料(てんりょう)もお返しくださいと言うと、
料金は見賃(みちん)にいただいておきますと。

これは点取俳諧(てんとりはいかい)というもので、
点者(てんじゃ)に採点してもらって得点を競う遊び。
もとは修業のために行っていたのですが、
いつの間にか点取り競争になってしまったのだそうです。

点者は職業として認められていて、
蕪村の時代の京都には30人ほどの点者がいました。
師匠クラスの人が奉行所などに届け出て、
許可が下りれば点者になれる、というのが一般的だったようです。

たとえば連句の会を催し、
その句を書きとめておいて点者に採点を依頼します。
各人の得点を合計して、高得点だと景品がもらえるのです。
これでは点取り競争をあおっているようなもの。

ついにはどの点者がどういう句を好むかを例示した
点取りガイドブックまで出版される始末。
今でいう攻略本ですが、そのせいで俳諧は
文芸としての質の低下を招くことになってしまいました。

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◆半面美人の高点印
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大ブームのおかげで忙しくてたまらない点者は
いちいち「たいへんよくできました」と書くのも面倒なので、
点印を使うようになります。

其角が使っていたのが「半面美人」と呼ばれる印。
高得点の句にこの印を押したので、
それが欲しくてさらに競争は激化することに。

ところがある日、大事な半面美人が紛失。
数日後、ある弟子の家に招かれると、
出された料理の中にその印が隠されていました。
弟子のいたずらだったわけですが、
其角は何事もなかったように持ち帰ったそうです。

その後其角は弟子の留守を見計らって
召し使っていた子どもに酒を飲ませると、
その大切にしていた仏像を捜し出して
首に縄をつけ、厠(かわや)の中に吊るしておいたとか。

いったいこの御仁、何を考えていたのでしょう。

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○酒を妻 つまを妾の花見かな
○十五から酒を呑出て けふの月
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